
新婚旅行は皆さまの心配をよそに、勇気のある二人は何もかも計画を立てて、アメリカ西海岸九日間の旅行にいきました。私はびっくりもし安心もしました。
昨年の八月には、桜井病院で元気な女の子を無事、出産しました。入院のとき、ろう学校幼稚部で学んだ「日本語の音頭」と「キュートスピーチのかまえ」の一覧表を、何部かコピーして看護婦さんに差し上げました。皆さん、理解を示して下さいました。口を見せて話して下さり、混み入った育児の説明などは黒板を使って、文字と口話で丁寧に説明して下さいました。何不自由なくお産ができ退院しました。
家では口話でコミュニケーションを取っておりますが、私も聴覚障害者にとっての色々な勉強のために、要約筆記や手話サークルに改めて参加して二年目です。ある日、手話サークルヘ行ったとき、四十代のろうの方が、「出産おめでとう赤ちゃんの耳聞こえるの」と手話で尋ねられました。私は思わず、「聞こえるよ」と言いましたら、その方は本当に嬉しそうに表情豊かに手話で、「良かったわ」と言って下さいました。本当に感激しました。
ひとみが幼いころ『お母さん、耳をちょうだい』の本を、山根先生に頂きました。孫(可奈)は、私どもの一番案じていた耳を頂いて、この世に生まれて来たのです。今度は、良いことが、たくさん聞けるように、応援してあげたいと思っております。そして『三つ子の魂百までも』とも言われますが、今まで学んだこのすばらしい教育を、障害児をもっておられるお母さんのご相談にのってあげたり、大勢の人々に理解頂けるようにすることが、今までお世話になった方々への、ご恩返しではないかと思っております。
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